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分子エレクトロニクスの確立に向けた、第一原理電気伝導計算

 研究方針

  単分子あるいはその集合体で電子デバイスを構築することを目指す “分子エレクトロニクス” は近年急速に発展し,ナノテクノロジーの一大分野に成長しつつあります.単にできるだけ小さいトランジスターやダイオードをつくるというだけではなく,化学反応をやスピンを利用したスイッチなど,分子の特性を最大限に活かした応用が期待されています.

  当研究室では,第一原理計算を用いて,新奇な実験結果を正しく解釈すると共に、新しい分子機能を予測することを目指します.

 具体的なテーマ

(1) PTCDA/Ag(111)、PTCDA/Al(111)界面の電気伝導特性の計算

(2) 電極間に架橋した分子ワイヤの鎖長依存性に関する研究

(3) Pドープシリコンナノワイヤーの伝導特性の計算 (過去)

(4) 内部置換ベンゼンジアミンの伝導計算 (過去)

 現在までの研究成果

(1) PTCDA/Ag(111)、PTCDA/Al(111)界面の電気伝導特性の計算

  PTCDA分子は多くの金属表面で自己組織化膜を形成します.PTCDA/Ag(111)とPTCDA/Al(111)界面について伝導計算を行い,分子と電極の電子状態とのカップリングが,特殊な界面準位の存在する前者では小さく,化学結合の強い後者では大きくなることを定量的に評価しました.

  その結果,前者では階段型,後者ではオーミックな電流―電圧曲線が得られることを示しました.

 

(2) 電極間に架橋した分子ワイヤの鎖長依存性に関する研究

  一般的に,2枚の電極間(電極間距離=L)に挟まれた分子の電気伝導度は,

        G = Gc exp (-βL)

のように表すことができます.

   オリゴフェニレンエチニレン分子の電気伝導度の鎖長依存性 を調べたところ,オリゴフェニレンエチニレン分子の減衰係数βの値が,真空中の値に比べておよそ10分の1であることがわかりました.これは,架橋分子を導入したことにより電子が長距離のトンネリングが可能になっていることを示しています.

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